第七章 重陽宮
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*文章量が多いため、2ページに分けております。
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第七章 重陽宮
掌教の誘い
今日誘ったのはほかでもない、お前に聞く。
俺の大いなる計画を手伝ってくれないか?
○○:お前に協力するだと……自分以前何を仕出かしたのかを覚えているのか?!
私たちの反対を無視して、剣境を守る約束を破り、強引に心魂と融合して……、
五剣の境に戦火を撒き散らし、今にも滅びかねない危機に晒したのは!お前だぞ!
木剣:っははははは……だからどうした?
○○:なんですって!?
木剣:無剣、聞け!
我らが五剣が覚醒を成し遂げ、
剣塚に封印された心魂と合わされば、
この牢獄のような世界を破壊し、主の魂を解放できるのだ。
○○:木剣、なぜそのようなことを!
それは全ての命を滅ぼし、五剣の境を壊滅させることに他ならない!
木剣:五剣の境にある魂は矮小で醜い。主に対する最高の生贄になるだろう。
主が再び蘇った時、この原点回帰の世界こそが、最高の贈り物なのだ。
○○:黙れ!
主が望むのは、決して不毛の荒漠ではない!
木剣、主は復活できないのだ、五剣の境はお前の狂気の犠牲になるだけだ。
木剣:俺が失敗するとでも?だとしても、奴らは大義のために死ぬんだ。
○○:主さえ人の運命を決めることはできないのに、私たちにできるわけがないでしょう!
木剣:この木剣、すでに決心した。
理由は十分だろう?
○○:木剣、私は必ずあなたを止めてみせる!
木剣:ふん、では貴様らを殺すしかないな。
剣塚の戦いから随分と時が経った、木剣はどこかで五剣の境を破壊する機会を窺っている。
そしてしばしの休息の後、その喧しい生活も倚天たちの遠出によって終わりを告げた。
ある日、顔に笑みを浮かべた青年が目の前に現れた。
彼は青色の道袍に身を包み、その上には不思議なドクロ飾りが掛けられていた。
秋水:拙僧、全真教の秋水と申すもの。
失礼ですが、貴殿がこの剣塚の主でしょうか。
○○:剣塚の主はもう亡くなりました。私は当面の間、彼の代わりにこの剣塚を守っている無剣というものです。
秋水:なるほど、引魂鏡を破壊した侠客(きょうかく)でしたか。これは大変失礼いたしました。
○○:いえいえ、引魂鏡を破壊できたのはみんなのお陰です。
ところで今日は何かご用でも?
秋水:掌教(しょうきょう)師弟の命を受け、あなたを重陽宮(じゅうようぐう)に招待したく存じます。
○○:うん?私の記憶では貴教とは何の接触もありませんが…。しかも、どの道長とも顔見知りではありません。
道長は何故剣塚に来たのでしょう?私の行方を追ってきたのでしょか?
秋水:はは…、話すと長くなりますが…。
○○:お聞かせください。
秋水:掌教師弟には特殊な才能を持っており、天地、未来のことを予知する能力があります。
○○:未来の事が見える……それは本当ですか?
秋水:嘘ではありませんよ。
○○:掌教のご尊名は何とおっしゃいますか・
秋水:帰一というものです。
○○:五剣の境は強者だらけです。剣に長けるものは天下に縦横し、布陣の達人は百戦百勝を誇る。
けれど未来の事が予知できる奇士というのは初耳です。
○○:ということは、帰一道長は私が剣塚に戻った事を知ったから、あなたを派遣してきたのですか?
秋水:いえ、そんなことはありません。十数日前、掌教師弟があなたと木剣の剣塚での戦いを予知したのです……
……
剣塚の中には破壊された兵器が一面に散らばっていて、
赤い血だまりの中には人がばらばらと倒れていた。
木剣:やはり、最後の一戦は俺と貴様の戦いとなるのだな……
○○:木剣!私がまだ生きている限り、あなたに五剣の境を壊させはしない!
木剣:五剣の境は主のために生まれ、主のために滅びるのだ。
木剣:無権、俺の言ったことは正しいだろう?
……
秋水:掌教師弟はこれが五剣の境の安否に関わると判断しました。そこで急ぎ私に剣塚にいるであろう無剣をさがせと命じたのです。
○○:そういうことでしたか。
ただ道長、私にはまだ一つ聞きたいことがあります。
秋水:仰ってください。
○○:帰一道長の未来予知が外れたことはありますか?
秋水:私の知る限り、一度も間違ったことはないはずです。
○○:それは…
秋水と話していると、剣塚の外に魍魎の声が響いた。
今もなお、彼らを救う方法はまだ見つかっていない。
被害が広まらないよう、今は彼らを倒すしかない。
○○:道長はここで少し休んでいてください、すぐ戻るから!
秋水:拙僧にも手伝わせて頂きたい。
秋水の策
○○:はい、木剣はずっとこうやって、彼自身の身を隠しているのです。
秋水:重陽宮まではそう遠くありませんが、少なくとも八,九日は掛かります。あなたがここを離れるとなると、剣塚の守りはどなたが?
○○:道長は注意深いですね。私もそれについて考えていました。
○○:五剣の境の存亡は私にとっても重要な問題、確かに急ぐ必要があります。
ですがこの剣塚は五剣の境の心臓ともいえる場所、敵の手に落ちるわけにはいきません。
秋水:貴殿に対する掌教師弟の招き、確かに突然でした。失礼なお願いをしてしまい、大変申し訳ない。
○○:あぁ、すみません、誤解させてしまったようですね。
私はただ一番相応しい人選について考えているだけなのです。
真偽の狭間
錦袍を来た青年が息せき切って走っている。林の中で彼を追いかける魍魎は爪を振り回し、彼の後ろ首めがけて飛びかかった。
???:助けてくれ!
青年は慌てて石につまずき、体が少しよろめいた。
鋭い爪が頭上を掠め、すぐ脇の頑丈な樹幹は幾つかの木片と成り果てた。
青年がためらっている間に、魍魎は再び彼に襲いかかろうとしたが、鋭い剣気によって両断された。
青年は怪訝な面持ちで山門を見つめていた。冷たい顔をした少年は剣を鞘に収め、訝し気な様子で彼をちらっと見た。
この少年は道袍を着ているが、山門両側の弟子のものとは服の飾りが明らかに異なっている。
???:(まだ若いようだが、この腕の立ちよう……)
???:手助け頂き、大変ありがとうございます。
???:もしや、無剣のご友人か。
???:その通りだが、なぜそれを?
???:魍魎が跋扈する昨今、わざわざ野外に出て危険を冒す愚か者は少ない。
全真教を訪ねる者となれば、無剣の使者か、或いは敵。それ以外考えられません。
浮生:なるほど。
俺は浮生だ。無剣に命じられ、帰一師叔に要件を伝えに参った。
テンコウ:拙僧、全真教のテンコウと申す。
テンコウ:どうぞこちらへ。掌教師叔のところへ案内しましょう。
浮生:よろしく頼む。
重い山門を通り抜けると、雄大な殿宇群と古風な鐘、鼓楼が見える。
石畳の道に沿って奥まで進むと、高い山の山頂に萬寿殿がある。
万寿殿の幅は七間、奥行き四間、八架像、九脊瑠璃の屋根。
殿内祭壇が置かれており、道教元始天尊、霊宝天尊、道徳天尊が祀られている。
祭壇の前、静かに座布団に座っている人に視線を向けた。
無尽の山道
いつか私自ら武当へ赴き、真武道長に礼を言わないと。
秋水:真武道長は仙風道骨を纏い、徳が高い上、非常に人望のある方です。道法、武学、丹術に精通しているので、
もし道長に指導してもらえれば、十年の修業より効果があるでしょう。
○○:倚天と屠龍の話しによると、彼は道の達人のようですね。
○○:あれ?!
秋水道長、まさか終南山にも引魂鏡が立っているの?
終南山に近づくほど、山林にいる魍魎たちの数も多くなってくる。
秋水:掌教師弟の指揮の下、山麓あたりの魍魎を討伐していた際、引魂鏡を一枚破壊したことがあります。
それ以来、魍魎は重陽宮に攻めてこなくなりましたが、なぜ今日…まさか、貴方に原因が?
○○:もしかして……あの時、私たちの会話を盗み聞きしていたものが…
秋水:重陽宮が心配です。申し訳ありませんが、先に向かわせて頂きます。
無剣:道長、私も共に……危ない!
言い争い
萬寿殿にて、浮生は帰一に供手して一礼する。
浮生:浮生、帰一師叔にお目通りいたす。
帰一:霊 虚 師 弟 の 弟 子 で あ る か ?
浮生:まさに。
テンコウ:(魍魎如き倒せないくせに、我が教の弟子を名乗るなど…試させてもらうぞ!)
テンコウ:霊虚師叔ほど武芸に通ずる方が、あれほど貧弱な弟子を持つなどあり得ん!
テンクウ:重陽宮の凡庸な弟子さえ、魍魎の二匹は倒すのだ。
貴様、言え!全真の弟子になりすまし、一体何を企んでおるのだ!
浮生:俺は……
突然の質問に、浮生は呆気にとられた。
浮生:テンコウ師兄、誤解です。
浮生:霊虚道長からもらった全真教の剣穂です!師兄、師叔、御覧ください。
浮生は綿袍の中から素朴な箱を取り出した。箱にはまだ道家がよく使う降真香の淡い香りが残っている。
テンコウが木箱を開けると、中には黒白二つの剣穂があった。
彼はそれを確認した後、帰一に渡した。
テンコウ:確かに我が教の全真剣穂だ。では、なぜ貴様の武功はこれほど凡庸なのだ。
浮生:霊虚道長は基本的な指導の後、すぐ旅に出てしまい、妖怪退治に向かわれてしまった。
浮生:以来、無剣と共に各地の引魂鏡を破壊しまわっていたのだ。
帰一:ふっ、あの人らしいな。
霊虚師弟は感情的だが、義を重んじる。豪快すぎてよく問題を起こすが、それゆえに敬われているところもある。
帰一:思えば霊虚指定もかれこれ1年以上は重陽宮に顔を出していないな。
お前が天下の人々のために走り回ったのならば、どうやら霊虚の基本的な部分以外も学んだのではないか?
浮生:帰一師叔……
テンコウ:ふん。侠客と共に魔を下し、道を守ったとしても、所詮口だけ。
今後鍛錬に励み、師門に恥とならぬよう精進しなさい。
帰一:テンコウ師侄はいつも門下生たちに厳しいのだ、あまり畏まらなくてもよい。
浮生:帰一師叔、俺はテンコウ師兄は正しい事を言っていると思っています。
帰一:ふむ、では本題に移ろう。無剣はなぜお前をここに?
浮生:魍魎の大部隊が剣塚を包囲しています。無剣と秋水師叔は戦いの準備で動けない。
しかし無剣は、五剣の境の現状を危惧していて、
帰一師叔に会って相談事を俺が代行できないか聞いてこいと。
帰一は目を閉じて少し考えた。しばらくして、口を開けた。
帰一:浮生師侄、お前からみて、無剣はどんな人物だ?
浮生:信頼できる人です。
浮生:出会ったころの無剣は記憶を失っていましたが、豪傑や侠客を率いて魍魎を退治して回っていました。
武芸はそこまで強くなかったのですが、あらゆる精妙の心法に通じ、
教えを請われても、一回も拒絶したことがありません。
テンコウ:精妙の心法は、各門派が相伝するか、或いは特殊な方法で手に入れるしかありません。
あらゆる心法に通ずるなど…無剣は何者なのでしょうか?
浮生:残念ながら、無剣と共に旅をした誰一人も、無剣の出自を知らないのだ。
テンコウ:無剣は自ら魍魎と戦うのですか?
浮生:無剣は軍師といえるな。後方で魍魎とも戦いの指揮を担っている。
浮生:しかし、剣塚の戦いで記憶を取り戻した無剣は、無形剣気で木剣に重傷を負わせた。
おそらく無剣は、凡人の及ばない武芸の持ち主なのかもしれない。
帰一が考え込んでいると、そばにいるテンコウがはっきりと尋ねた。
テンコウ:天火は全真教の神器。秋水師叔は剣塚に持っていくことに、同意したのか?
浮生:(秋水は無剣に天火の話なんてしたかな。)
浮生:(まさか天火はテンコウの出まかせで、俺は試されているのか?)
浮生:(もし天火が本当に全真教の神器ならば、秋水は最初から言わないかもしれない。そうなると面倒だ。)
浮生:(しょうがない。知らないふりをするしかない。)
浮生:天火?!それは?
テンコウ:もしや浮生師弟は知らないのか?
この度無剣を招いたのは天火のことを相談するため、秋水師叔はそのために赴いたのです。
浮生:あの時は皆慌ただしく、秋水師叔と詳しい話ができる状態ではなかった。
また秋水師叔も本教の神器に当たる天火の話となれば、慎重にもなるだろう。
浮生:たとえば、重陽宮に来たことのない俺に、軽々しく伝えることはあるまい。
テンコウ:なるほど、完璧な受け答えでした、もし私たちがあらかじめ準備をしていなければ、だまされていたところです。
浮生:……
危機一髪
お前は頭も切れる上に、霊虚師弟の教えを受けた身だ。しかしこのような真似をするのか。
浮生:おっしゃる意味が分かりません。どうかご教授を。
テンコウ:とぼけるな。我々は初めから武当派が魍魎の攻撃を退けることを知っていた。
秋水と無剣が残って戦いの準備をするわけがなかろう?
浮生:馬鹿な?!どうやってそれを…
秋水:掌教師弟には特殊な才能を持っており、天地、未来のことを予知する能力があります。
○○:未来の事が見える……それは本当ですか?
秋水:嘘ではありませんよ。
○○:掌教のご尊名は何とおっしゃいますか?
秋水:帰一という者です。
……
浮生:ありえない。凡人が未来を予知するなんて!
そうか…貴様らが言う、天火とやらの力だな、はは!
浮生は武器を取り出した。テンコウと帰一は応戦しようと内功の構えをとったが、その途端口から血が流れた。
次の瞬間、二人の体に激痛が走った。力が入らず動けない。
帰一:テンコウ、内功を発動するな!気をつけろ。
テンコウ:箱に付いていた香りは確かに降真香のはず…剣穂の素材も我々が使用したものと同じ……。
奴は一体どうやって毒を盛ったのだ……
帰一:降真香も剣穂も、目くらましに過ぎん。無色無臭の毒気を箱の中に隠しておいたのだろう。
浮生:師叔の言う通り。さすがだ。
この毒は無色無臭。毒に掛かると力が出せなくなる。無理やり内功を発動させれば、経脈を壊すのだ。
テンコウ:卑怯なやつだ!
魍魎に追われていたのも自作自演だな?
浮生:ふん、わかっているじゃないか。
言え、天火はどこだ。
テンコウ:教えるわけにはいかん!
浮生:帰一師叔、天火を渡してもらおう、でなければテンコウ師兄の首、もらい受ける。
テンコウ:天火は本教の神器だ、よそ者に渡してたまるか!
秋水:そこまで
一本の長剣が目の前を掠め、浮生はこれを急ぎ避けた。
秋水は身を翻して殿内に入り、テンコウの前に立った。
○○:浮生、解毒剤を出して!
浮生:…邪魔するな!
張子の虎
浮生:もし出さなければ、どうするというんだ。
○○:浮生、取り返しがつかなくなる前に、正道に戻って。
でないと、解毒剤を出すまであなたを殴るだけだよ。
浮生:解毒剤がほしいか?ならばますは俺をここから逃がせ。
テンコウ:単独で乗り込んでくるやつだ、解毒剤を必ず持っているだろう。殺して奪い取ればよい。これ以上の説得は無駄だ。
浮生:ついでにもう一つ付け加えようか、俺を見逃せば、お前ら一門の門下生の命を救ってやろう。
帰一:貴様、なにを!
浮生:俺は一人じゃ何もできなくてね。沢山味方を連れてきているんだ。
もし三刻(みこく)過ぎても重陽宮から出てこれなかったら突入するように指示してある。
さあ、もう時間がない。道士達が魍魎に食われるのは見たくないだろう?
浮生:帰一道長とテンコウ道長に解毒剤を飲ませても、回復するには一刻はかかる。
お前たち二人だけで弟子達を守るなんて無理だ。
テンコウ:虚勢を張っているだけです。殺せ!
秋水:テンコウ、落ち着いてください。
帰一:貴様、今すぐ下山しろ。
浮生:ふふ、感謝する、帰一師叔。
○○:浮生!
浮生:これが解毒剤だ。
オレを信じるなら飲ませてやれ。信じられないなら捨てればいい。
浮生は薬の瓶を私に渡すと、すぐに萬寿殿から離れた。
武芸切磋
秋水は私を客席に泊まらせ、帰一道長が回復した後に要件を相談することにした。
翌日、木家と魍魎の心配をしていた私は、山門の様子を見に行った。
重陽宮は広大な規模を持つ。
殿、堂、閣、塔、亭が約二千座あり、六千人程の道士が暮らせる。
石碑もいくつか置かれており、道化の経典詩、詞、絵画や書が刻まれている。
道中、私は多くの道士を見かけた。彼らは見回りをしているわけではなく、団体で修業をしていた。
それぞれ表情は厳しく、まるで戦いの準備をしているかのようだ。
山門で、四人の見張りが一人の男に叱られている。
教内のことに干渉するつもりはない、そこを離れようとした時、子供のような声に呼び止められた。
テンコウ:貴殿は……無剣?それとも……?
○○:○○でいい。
テンコウ:わかった。昨日は貴殿の助けがなければ、取り返しのつかないことになっていたでしょう。
○○:いえ。
昨日は秋水道長が終南山の異常に気づいたおかげで、私も駆けつけることができたのです。
道長の具合はもう大丈夫でしょうか?
テンコウ:もう大丈夫です。一つ無理を承知で頼みがあります。ご承諾をいただければ。
○○:おっしゃってください。
テンコウ:浮生から聞いたのですが、貴殿はあらゆる心法に精通し、無形剣気のような特殊な技も使えるそうですね。是非ご教示いただけないでしょうか。
無剣:武道の稽古とあれば断るわけにはいかないですね。けど道長の体は回復したばかり。あと一日ぐらい待ってもいいのでは。
テンコウ:お気遣いありがとうございます。
しかし貴殿はまたすぐに発たれるのでしょう。少ない時間を使ってぜひ手ほどきをお願いしたい。
○○:なるほど。ではここで手合わせしましょうか。
テンコウ:感謝致します。
血気盛り
テンコウ:大変勉強になりました。あの凡才たちが後何百年修行しても、貴殿のようにはなれないでしょう。
○○:それはあなたの……
テンコウ:ええ、門下の者たちのことです。
テンコウ:門守の時間も守れませんし、規律をなんとも思っていません。叱られても反省の色なく、こっそり悪口を言っているところを捕まえたこともあります。恥ずべき凡才達です。
○○:それは何か事情があったのでは……
テンコウ:何の事情があっても、教の規律は守らなければなりません。
どのような方法を用いてでも守るべきなのです。
テンコウ:もともと資質も平凡な上に、いつもダラダラとし、武功も修行もいい加減です。
全真教の奴らのせいでだめにならないよう、小生が全真教を栄えさせなければならない。
もし掌教の座に付いたら、絶対奴らを全て追い出します。
○○:どうして私に…それを…?
テンコウ:貴殿にしかこんなことを打ち明けたことはありません。
傑出した人は自分の力を知るだけでなく、相手の力も正しく測る必要があります。小生が見るに、貴殿は小生と同じく天才です。きっと私の考えを理解してくれると思っています。
○○:テンコウ…
秋水:ここにいたのですね。
○○:ごめん、敵襲が来ないか心配で、様子を見に来たの。
秋水道長が私に用があるってことは、もしかして帰一道長の怪我が治ったのですか?
秋水:ええ、掌教師弟が貴方を呼んでいます。萬寿殿に向かいましょう。
○○:分かりました。
テンコウ道長、機会があればまた稽古をしましょう。
テンコウ:宜しくお願いします!
私と秋水道長が遠くへ行った後、秋水は小さい声で聞いた。
秋水:先ほどはテンコウが手合わせを願い出たのですよね?
○○:どうして分かったの?
秋水:いつものことです。武芸に秀でた者がくると、必ず手合わせを願い出る。
○○:はは、なるほど、テンコウは本当に武学に夢中だね。
秋水:武芸において、彼はまるで無邪気な子供のようです。
満足を知らない。次回は違うことも指導して頂けると助かります。
○○:うん、了解、任せて。
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